エンディングフェイズ
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■接触 玖珂 司狼の場合
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GM:事件が解決して、例のうわさも消えたころ、皆の楽しみにしている文化祭が始まりました。実行委員が一人かけた状態ですが。生徒の屋台も大繁盛です。
司狼:そんな中を買い食いしながらてくてくと歩いていきます。
GM:すると、君とすれ違う一人の白衣の青年がいます。
司狼:はっ、として振り向きます。
GM:青年も振り向きますね。にっこり微笑んで仰々しそうに礼をします。
司狼:チェシャ猫ですか?
GM:多分。君のカンはそう告げている。
思わず身構えて司狼は白衣の男―――チェシャ猫を睨み付けた。
「貴様、また何か企んでいるのか?」
だが、目の前に立つチェシャ猫はそれを意にも介さず、張り付いたような笑みを浮かべて、やんわりとその言葉を否定した。
「いえいえ? 文化祭も悪くはないですねえ。少し興味があって入ったまでです。何もしてませんよ。そう怖い顔しないでください」
「ふん、この文化祭をふいにしてみろ。殺してやるからな」
殺気立つ司狼を尻目に、チェシャ猫はあくまで自分のペースを崩さない。
飄々としていて掴み所がなかった、と後にUGNに彼は報告している。
「ああ、それは無駄ってもんです。私は一人ではない」
その言葉にちっ、と舌打ちをする。こいつも複製体なのか、と。
「とっとと立ち去れ」
これ以上楽しい文化祭…あの佐倉みどりが成功させたがった文化祭を水の泡にしたくない…。
それを読み取ったのかどうかはわからないが、チェシャ猫はふむ、とぐるりと周囲を見渡すと、視線を司狼に移し
「まあ、一通り回りましたから、今から帰られせてもらいますよ」
そして一呼吸の間をおいて発言したチェシャ猫の声は、先程のものとはずっと違う低いものだった。まるでそれは何かにおいて腹立たしい、といわんばかりの。
「…それから」
「なんだよ」
眉をひそめて先を促す。
「くれぐれも私をFHと一緒にしないでいただきたい。それだけです」
そう言うと、先ほどの飄々とした風をまとい、颯爽と立ち去っていった。
「…FHじゃないのか?」
その背中をしばらく見つめたまま凍りつく。では、いったい何者なのだ、と。
だが、今はそんなことを忘れるに越したことはない。背を向けて逆の方向に歩き出す。
「まったく、厄介なことになりそうだ」
ついっと空を見上げる。
今日はいい天気だ。
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■ケーキバイキング 芳村 佳の場合
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GM:文化祭です。こちらも派手派手チックですね。
佳:んに、なんか、こー、輪の中に入りづらい感があって屋上辺りに避難してみたりとか(笑)
…楽しめよ(笑)
GM:屋上ですか。そうするといいにおいが下からもわもわと。
佳:おなかがくー、と鳴る(笑)
GM:そうすると、不意に声をかけられます。
「お、いたいた。探したぞ」
聞き覚えのある男の声だ。
「んー。どうし…?」
ナチュラルに聞き返して声の主に振り向く。
目の前には秋山夾士郎が串焼きを2本持って立っていた。
「あ、退院おめでとうございます」
流石に彼がここに来るとは、ちょっと予測がつかなかったので、反応が遅れた。
そんなことなど気がついてか気がつかなかったのか、佳が知るあの、人好きのする笑みを浮かべて佳の隣に歩み寄る。
「いやいや。ありがとさん。こっちも助かったよ。あのまま放っておいたら、病院壊してたからな」
彼はキュマイラ/ノイマンのシンドローム保持者だ。本気になれば、あるいはジャームになっていれば、あの拘束具くらいすぐ外して大暴れしていただろう。
佳はぴょこんと、会釈をしてにっこりと笑った。
「はい、間に合って、良かったです」
言いつつ、視線がなんとなく串焼きのほうに行っていたのはご愛嬌。
その視線に気がついて、自分のかじってないほうの串焼きを差し出す。
「お? 食うか?」
「あ、ありがとうございます♪」
受け取ってはむはむと食べる様は、まるで餌を受け取ったハムスターだ。
「こないだ言ってた、お礼だが、よかったら焼肉でもどうだ? おごっちゃるぞぅ」
夾士郎は本当に自由の身がうれしいらしい。ご機嫌だ。
「え? これで良いですよ。入院費とかで、お給料大変ですよね?」
「あー保険利くし。それに女の子一人の一回の食事なんてそんな高くつくもんじゃないさ」
「あー、それなら、焼肉よりも、その…」
ちょっと違うのがいいな、と思ったらしい。
「ん? なんだ」
「ケーキとかの方が……」
やはり女の子である。量より質か。甘い物の方がいいのだ。
「おう、それならそれでもいいけどな。んじゃ、文化祭終わってからでも行くかあ?」
「はいっ」
即答である。
文化祭終了後、ケーキバイキングに行く2人の姿があった。
「…太るぞ」
「別腹です♪」
GM: …デートじゃん(ぼそ
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■やさしい刻を 御風 遊人
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GM:文化祭の後、君は病院にいる。佐倉みどりは、チェシャ猫が飲ませたという薬の副作用でしばらく思うように体が動かせず、リハビリを必要としたからだ。
遊人:「…随分、回復したみたいだな」
GM: ベッドから起き上がって、君を迎え入れるね。
遊人:「だからって無理するな?」
GM/みどり:「起きるくらい、…なんでもないよ。それに、命の恩人を寝たまま迎えるなんて、悪いじゃない」
「……そんな風に言うのは無しだって前にも言ったろ」
鞄を適当な椅子に置きながら、ベッドに向かう。
「…取り敢えず、文化祭は無事に終わったよ」
そして、ベッドの傍らに座る。
「ほんと? よかった〜」
そういうみどりはずいぶん嬉しそうだ。
「…まぁ、俺がこっそり手伝ったからな。当然だ」
その言葉に、ちょっとほほを膨らませて、みどりが軽く抗議する。
「こっそりって…ちゃんと参加しないとだめじゃない。…」
「良いんだよ」
言葉を続けようとするみどりの言葉を遮る様に、遊人は口を挟んだ。
「一人参加できないってのは不公平だろ」
その言葉の深いところまで、みどりは受け取れなかったようだ。
「あら、むしろ、代わりに楽しんでほしかったな」
これはみどりの真意だ。遊人もそれはわかっていた。だが、とてもじゃないが楽しむ気にはならなかった。
「楽しむのは、他の二人の役目」
ちょっと、突き放した言い方になったな、言ってから少し後悔する。
「御風君は、楽しくなかった? 文化祭」
みどりが遊人の顔を覗き込む。
「あぁ、残念だけどな」
寂しげに口の端を引き上げる。
「…どうして? 今年で最後なんだから楽しまなくっちゃ損じゃない」
遊人も、みどりも高校3年。今年が最後の文化祭なのだ。
「どうしてって、決まってるじゃないか」
さも当然と言わんばかりに、遊人がみどりに言う。
「決まってるって、なにが?」
なんとなく、気がついていながらみどりは聞き返した。
「みどりが居ないから」
みどりが真っ赤になって凍りつく。流石に夕日はそこまで隠してはくれない。
「へ…変なの」
恥ずかし紛れに、焦った様にうつむく。
「…そうか?」
「普通、自分の名前って呼ばれても何も感じないでしょう?」
頬を染めたみどりも悪くない、と思う。
「ん? …まあな」
「だから、御風君が呼ぶと…なんだろ。……心臓、飛び出しそう…」
…遊人は凍りついた。その言葉の真意が読めなかったからだ。
戦闘やそんなことならある程度先が読めるんだが、彼女と相対するとどうも調子が狂う。
「…だから、変」
困ったようにみどりから視線を外す。
「……困ったな、じゃぁ止めよう…か?」
「えっ…ううん。そうじゃなくて……なんだか嬉しいから、それでいい…」
頬に手を当てて、自分の頬が火照ってるのを隠すようにして、左右に大きく首を振る。
「…そう、か。俺もみどりって呼ぶとなんか嬉しいから…このままが良かったんだ」
ふっと微笑む。
みどりもそれにつられて微笑みをうかべた。やさしい微笑み。
窓から入る風は夏の香りのする、心地のいい風だった。長いみどりの髪が風を受けて広がる。
しばしの沈黙。
その沈黙に耐えられずに、遊人がそっと視線をそらしてみどりに背中を見せた。
夕焼けの陽が、かろうじて遊人の顔色を隠していたが、みどりに負けず劣らず彼も頬を染めていたからだ。
みどりがすっと手を伸ばして背中から遊人を抱きしめた。そっと静かに。一言。
「ありがとう。貴方がいなかったら私、負けてた。怖かったけど、怖くなかったよ」
「…護ってくれてありがとう。信じてたの。貴方がきっと助けてくれるって…」
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『言葉の中の悪魔』 エンド
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